心平静に保つ

 ある方が相談で自分は本当に短気で、この短気を治したいが、年を取ると気が長くなると聞きましたが、もっとイライラと気が短くなったように思います。車を運転している時も、変な追越を掛けられたら腹が立って、その車を追い掛けて運転手にどなってしまうが後で後悔します。短気が治る方法はないですか?

 瞑想会のお釈迦様のお話を思い出しました。

 お釈迦様が菩提樹の下で瞑想中、一人の男性が3m程離れて座っています。

 やがてその男性がお釈迦様に質問をしました。「どの様にすれば腹が立つ気持ちを抑える事が出来ますか?」それに対しお釈迦様の答えは『心平静に保つ様に心掛けるが良い』「ですからその心を平静に保つにはどうすれば良いか、をお聞きしているのです」と男性はわずかに苛立って言いました。

 それに対しお釈迦様は『何故私にその様な毒矢を向けるのだ?毒矢をその様に他人に向けている間は、そなたの心を平静に保つ事は永遠に出来ないであろう。他人に矢を向ければ向ける程、様々な毒がその矢に更に重ねられ、ついにはその毒をいかにしても拭い去る事は出来なくなる』

 その男性は更に質問した。「さすれば毒矢を自分に向ければ、心平静に保つ事が出来るのですか?」それに対してお釈迦様は特にお答えにならなかったのです。数日が過ぎたある日、その男性は「言われる通りに毒矢を自分に向けてみましたが、やはり心を平静に保つ事が出来ません」と言いました。

 お釈迦様は男性を見て静かに話されました。『そなたが自分に毒矢を向けた、と思っているのは間違いである。その毒矢はそなたの心にまで刺さってはいない。心の表面に覆いかぶさっている雲にほんの少し、それも恐る恐る射してみただけである。恐れる事なく心深く突き刺して、毒矢の先を良く見つめるが良い。さすればそなた自身の、み仏の住んでいる心の光が、その矢の毒を溶かしてくれるであろう。その時初めてそなたは心を平静に保つ事が出来、永遠の幸せに触れる事が出来るであろう』

 それを聞いた男性は、お釈迦様に深々と頭を下げ立ち去りました。言うまでもなくその後、その男性もお釈迦様に帰依して仏弟子になりました。

 この様に他人に腹が立つのは自分自身の心の置き処が間違っているからなのです。腹がたった時、まず怒りの矛先を自分自身に向けて、何に対して腹が立つのかをよく見つめる事が大事です。
合掌