帝釈天の悩み
今月は大祭で24神仏のお力を頂きますが、私は東京の葛飾区に住んでいた事があります。葛飾と言えば柴又「フーテンの寅さん」で有名な帝釈天をお祀りされている題経寺があります。この帝釈天はインドの神様で、インドラと言い天部の神々の中では強い神様でした。強いと言われていたのに「帝釈天の悩み」と言うインドの説話があります。
ある日の事、帝釈天が天上界から、人間の世界を眺めていると一人の男が目に留まったのです。この男性はマハラジャと呼ばれインド一番の大金持です。そのマハラジャが惜しげもなく貧しい人々に、自分の財産を分け与え助けていました。その姿を見ていた帝釈天の心に、ふと不安がよぎったのです。インドには善い行いをすれば、あの世で天上界に生まれ変わる事が出来ると、信仰で説かれていました。
帝釈天はその男性を見てあれほど気持ちよく施しが出来る者は他にいない。あの男はきっと天上界に生れて来るだろう。それは良いとして自分より偉くなり、天上界で君臨するかもしれない。そうなっては大変だと思った帝釈天は一計を案じ、人間の姿に変わり、人間の世界に降りて来たのです。相変わらず惜しげもなく自分の財産を、貧しい人の為に施しているマハラジャの前に立ち、「世間の皆は施しをすると、天上界に必ず生まれ変わると思っているが、それは間違いである。本当は地獄に堕ちるのだ。ウソと思うなら私の神通力で証明してやろう」と言うとマハラジャが尋ねました。「施した私が地獄に堕ちると言われましたが、施しを受けた人々はどうなるのですか?」と聞いたのです。予想外の質問で答えに詰まった帝釈天は「皮肉な事に、その者達は天上界に生れる」と答えました。その言葉を聞いたマハラジャは大変喜びました。驚いている帝釈天に「それを聞いて安心しました。もし、自分の施しでその人達が地獄に堕ちるのならば、私はとんでもない間違いを犯した事になります。例え私が地獄に堕ちたとしても、一人でも多くの人々が天上界へ行けるのなら、こんなに嬉しい事はありません」それを聞いた帝釈天の立場はありません。思わず言ったのは「では貴方はいったい何に生まれ変わりたいのですか?」と尋ねるとマハラジャは「何に生まれ変わっても良いのですが、そこに自分の為すべき仕事があるのなら、そこが私の天上界だと仏様がその様に教えてくれました」この言葉を聞いた帝釈天は、大変感激し「これからは、どんな時にでも貴方を守っていきたい。それこそが神の勤めだと思うから」と言い帝釈天が仏教の守護神になったのです。
天部の神様は人間に一番近い所に居られます。ですから私達人間の心をいち早く観抜き、この者が助けるにふさわしいと思われたら、悩みを解決して下さるのです。
聖法院にも天部の神様が4人、常に見られている事を念頭に正しく言動し、しっかり信仰して下さい。合掌