己に勝つ

 五月は新生活が始まって少し落ち着く頃ですが、この頃に俗に五月病とも呼ばれ、精神的な病が多くなり、毎年五月を含む春に一番多くの自殺者が出ます。新しい環境に馴染めない新入社員や学生が悩む時期です。もちろん人に言えない程の苦しみを、自分で解決出来ないから追い込まれるのだと思いますが、そんな時は必ず誰かに相談し、話を聞いてもらうことが大切です。自分では全く浮かばなかった考えもあり、そこから意外に解決策が見つかることも多いものです。

 自殺は自分で自分を殺すことと同じであり、御神仏から見られたら殺人と同じくらい罪は重い。もちろん一般の殺人犯と同じ罪ではありません。皆さんは自分が何を目的に生まれて来たか、考えたことがありますか?ご神仏が説かれるには、人生の主な目的は自己を超越する(己に勝つ)事だとおっしゃいます。あの世からこの世に生まれて来た時の因縁も目的も全員違いますし、すべきことも親子や兄弟であっても各々違います。それを同じレベルで他人と比べるから腹が立って妬ましく思ったりします。例えば、私は御神仏に「お前は僧侶になれ」と言われ、僧侶になる為に一生懸命醍醐寺に通い、朝早くに集まって勉強をして試験を受けて僧侶になりましたが、それは途中の目標であり、目的を達したとは言えません。「僧侶になれたから良かった」で終わっては何の役にも立ちません。僧侶になったら次は何をするべきか?を考えて実践しなければなりません。同じ様に医師でも良い大学に入り、医学部を卒業して国家試験に合格し、医師になっただけでは何もなりません。東大を卒業する人は毎年大勢おられますが、世の中で出世している人は東大を卒業した人ばかりではありません。中には中学卒の方も大勢居られます。御神仏は『学校選びは自分のレベルに合った所なら何処でも良い。卒業した後にどの様な努力をして、人の役に立つ人生を送るかが大事である。出来るだけ多くの学生がいる場所で学び遊んで、様々な性格や生活水準の違う子供達と接する事によって、人間関係を作り、そこで揉まれることも大事である』と説かれました。様々な性格や生活水準の違いや、異なった環境で育った人々と行動を共にすることにより、人生にとって大事なことを体感し、学ぶこととなるのです。人生の目的は自己を超越することが一番の目的です。そしてこの世に生まれて来たからには、人に惜しまれて亡くなる人間になれる様、他人より己に勝つ事が大事です。                                   合掌