大切な事、薬師如来様

 先祖や水子の供養は成仏を願っての事ですが、そもそも仏と霊魂を同じ様に考えている方が多くいますが、大きな違いがあります。例えば最近亡くなられたおじいさんの供養をする時、成仏していますか?と聞かれます。気持ちは分かりますが、成仏を考え願うならば、まず亡くなられた本人が生きている間に成仏に向かう正しい言動をする必要があります。毎日、自分自身の心を見つめ、反省し懺悔しながら礼拝することです。成仏とは死んだ人がなるものだと思っているようですが、生きているうちから自分自身で成仏に向かって努力をする必要があり、それが一番大切です。人は亡くなって、すぐに「仏」にはなれません。死者は「霊魂」になるだけです。「仏」とは、お釈迦様やお大師様のように解脱された人のことを指します。亡くなられた方のことを「仏様になった。」と言いますが、正しくは「あの世に帰って霊魂となった。」と表現するべきです。あの世で修行をし、ある程度のことが分かり、位が上がってやっと仏というレベルの下の方に入ることが出来ます。もちろん生きている子孫も一生懸命供養して成仏に導く必要があります。しかし、この世にいる時、全然信仰心のなかった方は、あの世へ帰ってもすぐに成仏することは難しく、かなりの年数が必要です。早く成仏するには、生きている今が大切なのです。この一瞬一瞬の言動の積み重ねで、あの世へ帰った時の成仏にかかる年数が決まります。霊界やご神仏の存在を全く信じていなかった方は、ただうろたえるだけです。現世で生きている間にあの世を信じ、御神仏の存在を信じ、正しい信仰をして、自分の心を日々見つめることが大事です。

 四国八十八ヶ所をお参りした時、薬師如来様が『自分の心の中を旅せよ。』というお話をなさいました。自分自身の心の中を旅してみると、景色が素晴らしく、良い香りの花を咲かせている所もありますが、すごく汚れたドブ臭い所もあるでしょう。悪い景色をしっかり見て、この世で良い景色に修正すべきです。他人の心の景色の悪い所はよく判りますが、自分の心の景色が悪い所を探すことは、かなり難しいことです。何故ならば自分の心の景色の悪い所からは目をそらしてしまうからです。薬師如来様が『人々は忙しい忙しいと言って今日もやってくる。忙しい忙しいと言って礼拝している。人間は何が一番大切なのであろう。忙しい忙しいと言っている人は、何を大切にして忙しいと言っているのだろう。忙しい忙しいと言いながら礼拝して帰って行く人間を見ていると、私はふとその人間の人生はどうなるのだろうと思いやる。人間として一番大切な礼拝をしている時には、忙しい忙しいと思わずに、その時間を大切に集中して礼拝せよ。』と説かれました。一番大切な事が何であるかを再認識しましょう。 合掌