十一面観音菩薩

 11月にお寺巡りをしました。十一面観音様が祀られており、あの形を見て何故お顔が十一面もあるのかと質問がありました。実際に十一面あるのではなくて、観音様のお働きを分かり易く表したものです。重要文化財に指定された十一面観音様のお顔を拝見すると、前面の三面は菩薩面と言われて優しくて、とても穏やかで静かなお顔をしておられます。間違った所へ行きそうな人に「こっちですよ」と諭すお顔です。そして向かって左側に憤怒面(ふんぬめん)が三面あります。これは「ああしたい、こうしたい。こんなに拝んでいるのにどうして思う様にならないのか」と愚痴や煩悩で固められた愚かな人間のために、あなたの行くべき道はこっちだと怒るお顔です。そして狗牙面(くがめん)がてっぺんに一面だけあります。犬歯まで見せるほど笑い、善根功徳(ぜんこんくどく)を積みながら正しく道を行っている人を誉めたたえ、優しく微笑みかける。なおかつ、これからの人生を努力してこれからも間違い無くいきなさいと励ますお顔です。後ろの面が暴悪大笑面(ぼうあくだいしょうめん)と言い、どんなに正しく生活している人でも、ある日突然何か過ちを犯すかもしれない。その人を呼び出して大勢の前で恥をかかせてあざ笑い、善に立ち直らせることが最高級の叱り方なのです。特に日本人は自分の罪の意識には鈍感ですが、恥をかくことに対してはとても敏感なので、他人の前で叱ることは余程のことでないと出来ません。その人の信仰心や人間性を信じているのです。この人は人前で叱ってもこの注意事をありがたく素直に受けるだろう。そして必ず立ち直ってくれるだろう、と思っておられるのです。皆さんも会社の上司や親、知人に叱られた時は観音様の化身だと思い、素直に受け止めてください。そうするとその姿勢が相手に伝わって、次から感情的に叱らなくなると思います。
合掌