お盆月を迎えて

今月はお盆月です。8月12日の深夜12時を過ぎると、あの世から御先祖様をお迎えします。
つまり13日早朝から15日までは地獄の釜の蓋も開くと言われて、御先祖様は招かれることを、とても楽しみにしています。この時期に思い出すお話があります。

 皆様も良く御存知の童謡で『唄を忘れたカナリヤは、後ろの山に棄てましょか~いえいえ、それはなりませぬ~』昭和45年8月12日に亡くなられた西条八十さんは、次女を3才で亡くしました。このお嬢さんの出産の時、産婆さんが間に合わず、自らの手で取り上げた子供だけに、非常に可愛がっていたのですが、疫痢で亡くされた時の悲しみは大変なものでした。
その後、彼は人と話をするのも何をするのも億劫になり、気が沈むばかりの毎日だったのですが、ある日、同じ様に幼子を亡くした母親の話を聞き、ようやく自分を取り戻したそうです。

 その母親はある夜、夢をみたのです。それは大勢の可愛い子供達がそれぞれの手に輝くローソクを持って御神仏の周りを嬉々として歌いながら歩く様子でした。その群れの中に自分の娘もいたのです。しかし、良く見ると自分の娘だけが悲しげで、持っていたローソクも消えていたのです。
母親は娘を呼んで、なぜ貴女の火は消えているの?と尋ねました。すると娘はお母様が余りに嘆き悲しむので、その涙で私のローソクが消えてしまうのですと答えました。その夢を見た母親は、これは正夢でありお告げだと感じて、それ以後は泣くのを止めて一生懸命供養をしました。
その話を聞いた西条八十さんも、嘆き悲しむのを止めたそうです。

 仏教では死後百ヶ日を卒哭忌(そっこくき)と呼びます。哭とは大声で泣く様です。どんなに悲しくても百日たった時、もう泣くのを止めよう。いつまでも泣いていると涙でローソクも消えて死者の行く道を照らす事も出来ず、あの世での修行までも止めてしまう事になるのだと悟ったのです。これは真実だと思います。
先日もある方の先祖供養をした時に、その男性は自分が残した妻が、嫁と上手く行かないのをあの世で見て嘆き、その事が気になって自分の修行どころではないと伝えてきました。また、ある方は御主人の年忌法要をした時、妻は最近、夜ごと泣いていて、気になって前に向かって進めないので、妻に理由を聞いて欲しいと言われ、施主の奥様に尋ねると自分は一人暮らしですが、最近次々と親しい知人や友人が亡くなってしまい、もう淋しくて生きて居たくない。主人に早く迎えに来て欲しいと仏壇に向かって頼んでいたそうです。

私達は皆それぞれに寿命が決まっています。早く迎えに来て欲しいと、いくら頼まれても決まった寿命に逆らってまで御主人は迎え入れる力もないし、あの世から泣いている妻をどうする事も出来ないので、ほとほと困ったのでしょう。
霊界で修行している御先祖様を困らせる事は、成仏の妨げになりますので、心配をかけずに成仏だけを願うように気をつけましょう。  合掌