人間関係

 動物の中で一番臆病な動物は「やまあらし」だそうです。弱い自分を守る為に沢山の針を持っています。精神的に弱い所を持っている私達も、心の中にとげや針を持っています。もちろん人によって、そのとげの大小、長短、太さなどに違いが有ります。あまり他人にべったり近寄ると、お互いの針同士が傷付け合います。車も車間距離を保たないと自分は運転がうまいと自信があっても、他人からぶつけられることがあります。同じ様に人間もある程度一般社会では、距離を置いた方が良いようです。なぜならば、お互いに本音を出さない人が多いからです。会社に行っても上司に自分の本音を吐き出すことが出来ず、表面的な思いしか伝えられないことが多い。本音とのギャップが大きい程ストレスが溜まっていきます。それが次第に人間関係を悪化させます。

 

 仏教の教えは、「人間は生まれる時も死ぬ時も一人、孤立したもので寂しいものだ。」これを自覚しなさいということです。嘘で固められた人間関係を作ろうとするから、とげや針でやられるのです。嘘のない人間関係を作り、針を持たない心を養うのが信仰です。信仰によって相手を信じ、相手に布施(ふせ)の関係を持つことです。上司と部下、親子、夫婦、兄妹などの家族、その他の人間関係で、お互いに相手には何をしてあげたら一番喜ぶだろうか?と行為の布施を考えながら関係を結べば、人間関係の糸が絡むことはないはずです。相手ばかりが愚かなのではなく、自分の愚かさも認めることが大切です。

 

 例えば一人で住んでいる人がお友達にケーキを買って行きます。「ケーキを買って来て上げたよ。」の気持ちではなく、楽しいから一緒に食べようね。食べてくれる相手に感謝をする。布施をする相手に対して感謝することです。相手に見返りを求めているから、対人との関係が段々くい違ってくるのです。ギブアンドテイクでは人間関係は上手くいきません。相手に何かを求めても恩を売っても駄目です。

 

 自分の針やトゲは外に向けるものではなく、自分の心に向けるのです。本来の自分の敵は自分の心の中にあります。これらの教えがお釈迦様の説かれた仏教であり信仰です。同じ信仰を持っている人同士がもめるのは何故か?信仰の前には上下関係がなく、みんな同じレベルから始まるからです。平等から始まるので本音が出るのです。お互い自分自身の悪い所を自覚し、感謝と布施の心を忘れなければ必ず良い人間関係が結べます。そこには沢山の幸せが待っています。

合掌