新年の言葉

 明けましておめでとうございます。信者の皆様、ご参詣頂いている皆様の多大なる御協力、そしてご神仏のご守護のお蔭で、今年も無事に新春を迎えられる事を心から感謝致します。

 今年は戌年です。字は違いますが犬にちなんだ言葉で思い浮かぶのは『犬猿の仲』や『犬も歩けば棒に当る』など一見マイナスイメージの言葉が多いように感じます。『犬も歩けば棒に当る』とは、外を歩いていると棒に当たるという悪い事がおこる感じですが、良い事にも出会うと言う表裏一体の意味があるそうです。
 人生は悪い事ばかりではなく、良い事にも必ず巡り会います。中には例外もありますが、人間の脳は悪い事は何時までも記憶に残っているそうです。従って人生悪い事の方が多いと感じるかもしれませんが、件数を細かく思い出すと、良い事も悪い事も件数としては、ほとんど変わらないそうです。もちろん人それぞれに出会う事柄の大きさやインパクトには違いがあると思います。これらを思うと、人生良い事ばかりではなく、悪い事も織り交ぜながら生きて行くのが当たり前なのです。

 『涅槃経』の中に次の様な物語があります。ある夜に一軒の家を訪ねて来た人が居ました。主が出ると容姿端麗な女性が立っているので、「どなた様ですか?」と尋ねると、『私を招く事によって金銀財宝が貴方の所に舞い込む、非常に有難い功徳天(くどくてん)と申します』それを聞いた主は大変な喜び様で、美人な上に財宝まで手に入ると、喜んで家に招き入れました。
 それから間もなく、又誰かが尋ねて来ました。主が出ると先程の美人とは真逆の不美人で身なりも大変汚い女性が立っていました。「どなた様ですか?」と尋ねると、『災害と不幸を招く極悪天(ごくあくてん)です』と答えました。主はあわてて奥から刀を持って来て「帰らねば、切るぞ」と言いました。
 するとその女性は『あなたは大変な愚か者だ。先程招き入れた功徳天は私の姉です。私達はいつも一緒に歩いています。離れる事は出来ません。先に姉がお宅に入ったので、当然私も入れて貰えると思って来ました。私を憎むなら姉も憎みなさい。姉を愛するなら私も同じ様に愛しなさい』それを聞いた主は大変驚いて「二人とも要らないから帰ってくれ」と追い出しました。

 この様に人生は良い事ばかりではなく、悪い事も必ずついて来ます。善と悪は表裏一体なのです。私達人間も外面が良くても、自分でも気付かない悪の心を持ち合わせているかもしれません。それはご神仏にしか見えないのです。
 災難が巡ってきた時は、嘆くのではなく努力をする事によって物事は幸せに転じるのです。この様に人生は良い事ばかりではなく、悪い事も織り交ぜながら生きて行くのが当たり前です。良い事があった年には心から感謝し、もし悪い年回りが来たとしても、今年は他人の順番だな、と思って落ち込む事なく努力をしましょう。すると必ず自分の良い年の順番が巡って来ます。

 今年も聖法院を心の故郷として、皆様のお参りを心からお待ちしております。

合掌