新年の言葉

 新年明けましておめでとうございます。昨年中は色々ご協力頂き誠にありがとうございます。除夜の鐘の後、初法会を修し振り向くと、そこに初めてご縁を頂く方々に出会うと大変嬉しく思います。また毎年お参りに来て下さるお元気な皆様方にお会い出来ると本当にほっとします。今年は申年です。干支の九番目に当たります。申の時刻とは午後三時から五時の間で、方向は西南西を指しております。

 この申の字が入った言葉に『庚申待ち』(こうしんまち)があります。中国の道教の教えに基づき、平安時代から公家や僧侶の間に広まりました。江戸時代に全盛期となり、明治時代まで行われ、今でも地方によっては続けられているそうです。『枕草子』(まくらのそうし)にもこの事柄が書かれています。人間の頭と胸の辺りと下半身に各一匹ずつ、二寸大の虫がいて、その人の悪事を監視しています。庚申の夜に眠ると、中に居る三匹の虫が脱け出して昇天し、帝釈天(たいしゃくてん)を通じて閻魔大王様(えんまだいおう)にその人の罪過を告げ、短命になったり、命が奪われるといういわれがあるので、寝ずに過ごす行事です。

 庚申とは六十日に一度巡って来る第五十七番目に当たる日です。『年に六度の庚申を知らずして、二世の大願は成就せぬ』と戒められています。仏教では本尊を帝釈天、神道では猿田彦神(さるたひこのかみ)としています。人間としてこの世に生を受けた人々は、全員悪業を持って生まれて来ます。生きているだけでも大なり小なり罪を犯しながら暮しています。いつでも大の字になって堂々とゆったり眠れる様に、善行を施し、罪を消しながら暮したいものです。身体の中の三匹の虫に、閻魔大王様に悪業を告げ口される事柄がない様に、お釈迦様の教えを守り実行し、自分自身が迷う事なく、正しい道を歩む日々を送りたいものです。

 元旦にゴマ修法をし、不動明王様からお言葉を頂きました。『人生は平凡な暮らしを望む人間が多いが、神仏から見ると、平凡な人生はこの世に生を受けながらも、修行を一回休みと考える。人々は清濁(せいだく)、静動(せいどう)、緩急(かんきゅう)がある人生の方が良い。メリハリのある人生を送り、その中で善悪をしっかりと見極めて、魂の向上を図るがよい。』と説かれました。

 今年も聖法院を心の故郷とし、嬉しい時も悩める時も、聖法院の御神仏にご報告し、楽しく過ごして頂きたいと願っております。今年もよろしくお願い致します。

合掌