ひな祭り

 今日は「ひな祭り」です。ひな祭りは女の子の成長を祝う日でもあります。

ひな壇の前で家族そろってちらし寿司やあられを頂きます。ちらし寿司の彩には意味があります。それぞれの食材が四季を表していて、全体が宇宙を表しているそうです。春はさやえんどうの緑、夏は紅しょうがの赤、秋はレンコンで白、冬はのりの黒、中央が太陽を表し卵を使用します。この様に意味のある食 物を頂いて、これからの成長を宇宙の万物に願う儀式でもあるのでしょう。

 私は子供の頃、女に生れた事を何度も悔やんだ事があります。男子の方がよっぽど徳だと少し不満に思っていた時期があります。何故かと言えば母の口癖で、「女の子の癖にお行儀良くしなさい」言葉使いに気をつけて、愛想良く、とかく男子より女子の方が細かい注意事があった様に感じたのです。その中で玄関の履物をきれいに並べなさい、と言うのがあり、自分が並べて脱いでも、兄が乱雑に脱いでしまうので、キリがなかった思い出があります。

 仏教用語で『脚下照顧』(きゃっかしょうこ)があります。よくお寺の修行道場の入り口に書かれています。簡単に言えば足元を見よ、もっと掘り下げて考えると自分自身を見つめなさい。一人一人が気をつけて、履物を揃えて脱ぐのが一番良いのですが、急ぎあがる場合もあるでしょうし、乱れていたら当然、誰ともなく揃える習慣をつける事が、自分の心の乱れを整理する事にもなるのです。しかし揃えた後の心の持ち方が肝心です。これは誰の履物なのかを詮索して、後でその人に文句を言ったり、陰口を叩いたり、と腹が立つのならば揃えないで放置する方が罪はありません。整頓する事によって自分自身の心も清々しくなるし、自分の為でもあるのです。他人の行いを許す事は、自分が負ける事でも、プライドがキズつく事でもありません。

 法句経の有名な句で『他人への怨みは、怨みをもって晴らす事は出来ない。しかし耐え忍ぶ事によって自分の怨み心は止める事が出来る』と説かれています。私達の住むこの世界は『娑婆』(しゃば)である、とお釈迦様が説かれました。娑婆は『忍土』(にんど)とも言われ耐え忍ばなければならない世界の事です。人間は耐えている間に反省し、自分自身の行いを含めて考える時間を与えられます。これが娑婆に住む私達一人一人に課せられた人生の修行です。他人を許す事が、自分も許される事になるのです。他人を許せないのは、自分が何も悪い事をしていないと間違った考えでいる人です。子供の頃から今に至るまで、大なり小なり何らかの悪い事をしています。ただ覚えていないだけです。自分の言動が悪い事だと自覚していない場合も多いのです。知らず知らずの内に他人に迷惑を掛けている場合もあります。もちろん謝りもせず、誰かが耐えてくれているのです。様々な要因を考えた時、他人を許す心を持つ事も、この娑婆での修行の一つです。ただし子供に対するしつけは、大人になる修行段階で別の事ですからご注意下さい。   合掌